アキレス腱炎は、スポーツ愛好家や立ち仕事が多い方に頻発する疾患です。鍼治療は、痛みの緩和や炎症の抑制に効果が期待できる代替療法として注目されています。本記事では、アキレス腱炎に対する鍼治療の効果、使用されるツボ、そして自宅でできるセルフケアについて解説します。
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アキレス腱炎とは?原因と症状
アキレス腱炎の主な原因
アキレス腱炎は、アキレス腱への過度な負荷や繰り返しの刺激によって発生します。ランニングやジャンプなどの運動、不適切な靴の使用、ふくらはぎの筋肉の柔軟性不足などが原因として挙げられます。これらの要因が複合的に絡み合って、アキレス腱に微細な損傷を引き起こし、炎症へとつながることがあります。
運動の種類や強度、頻度なども影響します。例えば、急に運動量を増やしたり、準備運動をせずに激しい運動をしたりすると、アキレス腱に過剰な負担がかかりやすくなります。また、硬い路面でのランニングや、クッション性の低い靴での運動も、アキレス腱への衝撃を増大させる可能性があります。
さらに、加齢に伴いアキレス腱の柔軟性が低下することも、アキレス腱炎のリスクを高めます。腱の柔軟性が失われると、わずかな負荷でも損傷しやすくなるため、注意が必要です。日頃から適切なストレッチを行い、柔軟性を維持することが重要です。
アキレス腱炎の代表的な症状
主な症状は、アキレス腱周辺の痛み、腫れ、熱感です。運動後や朝起きた時に症状が悪化することがあります。重症化すると、歩行困難になることもあります。初期段階では、運動時に軽い痛みを感じる程度ですが、放置すると痛みが徐々に強くなり、日常生活にも支障をきたすようになります。
特に、アキレス腱を押したり、つま先立ちをしたりすると、痛みが強く現れることが多いです。また、アキレス腱の周辺に腫れや熱感を伴うこともあります。これらの症状は、炎症が起きているサインであり、早期の対処が必要です。
症状が進行すると、安静時にも痛みを感じるようになり、歩行が困難になることがあります。さらに、アキレス腱が断裂するリスクも高まります。そのため、初期症状に気づいたら、無理をせずに休息し、適切な治療を受けることが大切です。
アキレス腱付着部炎との違い
アキレス腱炎は腱の中央部分に炎症が起こるのに対し、アキレス腱付着部炎は腱とかかとの骨の付着部分に炎症が起こります。痛む場所が少し異なることがあります。アキレス腱炎は、アキレス腱の中央部分に痛みが生じることが多く、運動時に痛みが強くなる傾向があります。一方、アキレス腱付着部炎は、かかとの骨との付着部分に痛みが生じ、特に歩き始めや立ち上がり時に痛みが強くなることがあります。
また、アキレス腱付着部炎では、かかとの骨の周辺に骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の突起が形成されることがあります。これは、炎症が慢性化することで、骨が過剰に反応して形成されるものです。骨棘ができると、さらに痛みが悪化することがあります。
治療法も若干異なり、アキレス腱炎では、安静、アイシング、ストレッチなどの保存療法が中心となりますが、アキレス腱付着部炎では、これらの治療に加えて、足底板(インソール)の使用や、場合によっては手術が必要になることもあります。
鍼治療がアキレス腱炎に有効な理由
血行促進と痛みの緩和
鍼治療は、患部の血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。これにより、痛みが軽減され、組織の修復が促進されます。鍼を刺すことで、血管が拡張し、血流が増加します。血流が良くなることで、酸素や栄養が患部に供給されやすくなり、細胞の修復を助けます。
また、鍼刺激は、筋肉の緊張を和らげる効果もあります。アキレス腱炎では、ふくらはぎの筋肉が緊張していることが多く、これがアキレス腱への負担を増大させています。鍼治療によって筋肉がリラックスすることで、アキレス腱への負担が軽減され、痛みが緩和されます。
さらに、鍼刺激は、痛みを伝える神経の活動を抑制する効果も期待できます。鍼を刺すことで、脳内で痛みを抑制する物質が放出され、痛みを和らげます。これらの効果が複合的に働くことで、鍼治療はアキレス腱炎の痛みを効果的に緩和することができます。
炎症を抑える効果
鍼刺激は、炎症を引き起こす物質の放出を抑制し、炎症を鎮める効果が期待できます。アキレス腱炎の炎症は、プロスタグランジンやサイトカインなどの炎症性物質によって引き起こされます。鍼治療は、これらの物質の放出を抑制し、炎症を鎮める効果があります。
具体的には、鍼刺激によって、副腎皮質からコルチゾールという抗炎症ホルモンが分泌されます。コルチゾールは、炎症性物質の働きを抑制し、炎症を鎮める効果があります。また、鍼刺激は、免疫細胞の働きを調整し、過剰な炎症反応を抑制する効果も期待できます。
さらに、鍼治療は、血管内皮細胞の機能を改善し、血管の炎症を抑制する効果もあります。血管内皮細胞は、血管の内側を覆う細胞で、炎症性物質の放出を調整する役割を担っています。鍼治療によって血管内皮細胞の機能が改善されると、血管の炎症が抑制され、アキレス腱炎の症状が緩和されます。
自然治癒力を高める
鍼治療は、身体が本来持っている自然治癒力を高めることで、アキレス腱炎の根本的な改善を促します。東京α鍼灸院や渋谷α鍼灸院でも症状に合わせて施術が行われています。私たちの体には、傷ついた組織を修復し、病気を治すための自然治癒力が備わっています。鍼治療は、この自然治癒力を活性化させる効果があります。
鍼刺激は、自律神経のバランスを整え、免疫機能を高める効果があります。自律神経は、体の様々な機能を調整する神経で、ストレスや疲労によってバランスが崩れやすくなります。鍼治療によって自律神経のバランスが整うと、免疫細胞の働きが活性化され、炎症を鎮め、組織の修復を促進します。
また、鍼治療は、脳内の神経伝達物質のバランスを整える効果も期待できます。脳内には、痛みを抑制したり、気分を安定させたりする様々な神経伝達物質が存在します。鍼治療によってこれらの物質のバランスが整うと、痛みが軽減され、心身ともにリラックスした状態になり、自然治癒力が高まります。
アキレス腱炎の治療に使われるツボ
太谿(たいけい)
足の内くるぶしの後ろにあるツボで、腎経の気が集まるところです。アキレス腱の痛みを和らげる効果があります。太谿は、足の内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみに位置しており、触ると脈を感じることができます。このツボは、腎経という経絡に属しており、腎臓の機能を高める効果があるとされています。腎臓は、体内の水分バランスを調整し、老廃物を排出する役割を担っており、腎経の気が滞ると、足腰の痛みや冷え、むくみなどが生じやすくなります。
太谿を刺激することで、腎経の気が活性化され、アキレス腱周辺の血行が促進されます。血行が良くなることで、アキレス腱に酸素や栄養が供給されやすくなり、痛みが和らぎます。また、太谿は、足腰の冷えを改善する効果も期待できます。アキレス腱炎では、足の冷えが痛みを悪化させることがあるため、太谿を温めることで、症状の緩和につながります。
崑崙(こんろん)
外くるぶしの後ろにあるツボで、アキレス腱の炎症を鎮める効果が期待できます。崑崙は、足の外くるぶしとアキレス腱の間のくぼみに位置しており、触ると骨の際に感じられます。このツボは、膀胱経という経絡に属しており、体内の水分代謝を促進し、炎症を鎮める効果があるとされています。膀胱経の気が滞ると、腰痛や肩こり、頭痛などが生じやすくなります。
崑崙を刺激することで、膀胱経の気が活性化され、アキレス腱周辺の炎症を抑制する効果が期待できます。また、崑崙は、足のむくみを解消する効果もあります。アキレス腱炎では、炎症によって足がむくむことがあり、崑崙を刺激することで、むくみが軽減され、痛みが和らぎます。
さらに、崑崙は、腰痛や坐骨神経痛の緩和にも効果があるとされています。アキレス腱炎と腰痛は、関連性がある場合があり、崑崙を刺激することで、両方の症状を改善することができます。
承山(しょうざん)
ふくらはぎにあるツボで、アキレス腱にかかる負担を軽減し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。承山は、ふくらはぎの後ろ側の筋肉が盛り上がっている部分に位置しており、つま先立ちをすると、より分かりやすくなります。このツボは、膀胱経という経絡に属しており、ふくらはぎの筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果があるとされています。
承山を刺激することで、ふくらはぎの筋肉がリラックスし、アキレス腱にかかる負担が軽減されます。アキレス腱炎では、ふくらはぎの筋肉が緊張していることが多く、これがアキレス腱への負担を増大させています。承山を刺激することで、筋肉が柔らかくなり、アキレス腱への負担が軽減され、痛みが緩和されます。
また、承山は、足のつりを予防する効果もあります。ふくらはぎの筋肉の緊張が原因で足がつることがありますが、承山を刺激することで、筋肉がリラックスし、足のつりを予防することができます。
アキレス腱炎の予防とセルフケア
適切なストレッチ
アキレス腱やふくらはぎの筋肉を柔軟に保つために、ストレッチを継続的に行いましょう。運動前後のストレッチは特に重要です。アキレス腱やふくらはぎの筋肉の柔軟性を高めることは、アキレス腱炎の予防に非常に効果的です。硬くなった筋肉は、アキレス腱への負担を増大させ、炎症のリスクを高めます。
ストレッチを行う際には、無理のない範囲でゆっくりと伸ばすことが大切です。反動をつけたり、痛みを我慢したりすると、筋肉を痛めてしまう可能性があります。息を止めずに、深呼吸をしながら行うと、より効果的です。
運動前には、アキレス腱やふくらはぎの筋肉を温めるための軽いストレッチを行いましょう。運動後には、クールダウンとして、より時間をかけてストレッチを行うと、疲労回復を促進し、筋肉の柔軟性を維持することができます。
靴選びの重要性
足に合った靴を選び、アキレス腱への負担を軽減しましょう。インソールを使用することも効果的です。靴は、私たちの体を支え、運動時の衝撃を吸収する役割を担っています。足に合わない靴を履いていると、アキレス腱に過剰な負担がかかり、炎症のリスクを高めます。
靴を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。まず、自分の足のサイズを正確に測り、適切なサイズの靴を選びましょう。靴の幅や高さも重要で、足に圧迫感がないか、かかとが浮かないかなどを確認しましょう。また、靴底のクッション性も重要で、衝撃を吸収してくれる素材を選びましょう。
インソールを使用することも効果的です。インソールは、足のアーチをサポートし、アキレス腱への負担を軽減する効果があります。特に、偏平足やハイアーチの方は、インソールを使用することで、アキレス腱炎のリスクを下げることができます。
運動量の調整
アキレス腱に痛みを感じたら、無理な運動は避け、安静にすることが大切です。運動量を調整し、アキレス腱への負担を減らしましょう。アキレス腱に痛みを感じたら、それは体からのSOSサインです。無理に運動を続けると、炎症が悪化し、症状が長引く可能性があります。
まずは、痛みが引くまで安静にすることが大切です。運動を休止し、アキレス腱への負担を減らしましょう。アイシングや圧迫などの応急処置も効果的です。痛みが軽減したら、徐々に運動量を増やしていくようにしましょう。
運動の種類も重要です。アキレス腱に負担のかかりやすいランニングやジャンプなどの運動は避け、水泳やウォーキングなどの負担の少ない運動から始めましょう。運動前には、必ずストレッチを行い、アキレス腱やふくらはぎの筋肉を温めてから運動するようにしましょう。
まとめ:アキレス腱炎には鍼治療とセルフケアが効果的
アキレス腱炎は、適切な治療とセルフケアで改善可能です。鍼治療は痛みの緩和や炎症の抑制に効果が期待できます。日頃からストレッチや靴選びに気を配り、アキレス腱炎を予防しましょう。症状が改善しない場合は、専門家にご相談ください。アキレス腱炎は、放置すると慢性化し、日常生活に支障をきたすことがあります。早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、早期回復を目指しましょう。
鍼治療は、アキレス腱炎の痛みを緩和し、炎症を抑制する効果が期待できます。また、セルフケアとして、ストレッチや靴選び、運動量の調整なども重要です。これらのセルフケアを継続的に行うことで、アキレス腱炎の予防にもつながります。
もし、症状が改善しない場合は、専門家にご相談ください。医師や理学療法士、鍼灸師などの専門家は、あなたの症状に合わせた適切な治療法を提案してくれます。早期に専門家の診察を受けることで、アキレス腱炎の根本的な改善を目指しましょう。