記事の監修者情報

吉原 稔

資格:柔道整復師 (整骨院を開業できる国家資格)
柔道整復師専科教員(大学、専門学校の柔道整復師科で講義することができる資格)
NSCA CSCS(全米ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)
経歴
2010~2015年 医療法人堺整形外科医院 福岡スポーツクリニック
2015~2017年 医療法人TSC タケダスポーツクリニック
2018~現在 よし姿勢&スポーツ整骨院・整体院
2014~2017年 福岡医療専門学校 非常勤講師
2015~2023年 九州医療専門学校 非常勤講師
2024~現在   福岡医健・スポーツ専門学校
 非常勤講師

膝に水が溜まるとはどういう状態?

膝関節の構造と関節液の役割

膝関節は、大腿骨、脛骨、膝蓋骨で構成され、関節包という袋で覆われています。関節包の内側には滑膜があり、関節液を分泌しています。関節液は、関節の動きを滑らかにし、軟骨に栄養を供給する役割を果たしています。この関節液は、ヒアルロン酸を主成分とし、関節の軟骨同士が直接ぶつかり合わないようにクッションの役割も果たしています。また、関節の内部には血管が少ないため、関節液が軟骨に栄養を運ぶ重要な役割も担っています。健康な膝関節では、関節液は適切な量が維持されており、スムーズな動きをサポートしています。しかし、何らかの原因で関節液のバランスが崩れると、膝に水が溜まるという状態を引き起こすことがあります。

膝に水が溜まる原因

膝に水が溜まる原因は様々ですが、主なものとしては、変形性膝関節症、半月板損傷、靭帯損傷、関節リウマチ、痛風、感染症などが挙げられます。これらの疾患や外傷により、関節内で炎症が起こり、関節液が過剰に分泌されることで、膝に水が溜まります。変形性膝関節症は、加齢に伴い関節軟骨がすり減ることで発症し、炎症を引き起こしやすくなります。半月板損傷は、スポーツや事故などによる外傷で発生することが多く、損傷部位から炎症が広がり、関節液の過剰分泌を招きます。靭帯損傷も同様に、外傷が原因で炎症を引き起こし、水が溜まる原因となります。関節リウマチや痛風は、自己免疫疾患や代謝異常が原因で関節に炎症が生じ、慢性的に水が溜まることがあります。感染症の場合は、細菌やウイルスが関節内に侵入し、炎症を引き起こすことで水が溜まります。これらの原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。

膝に水が溜まるときの症状

膝に水が溜まると、膝の腫れ、痛み、可動域の制限などが現れます。腫れは、膝全体が膨らんだように見える場合や、膝蓋骨の周囲がポコッと膨らむ場合があります。痛みは、初期には運動時のみに現れることが多いですが、進行すると安静時にも痛みを感じるようになります。膝の可動域制限は、正座が困難になったり、膝を完全に伸ばすことができなくなったりする形で現れます。また、膝に水が溜まることで、膝関節が不安定になり、歩行時に膝がガクガクするような感覚を覚えることもあります。さらに、膝の内部に圧迫感を感じたり、重だるい感じがしたりすることもあります。これらの症状は、日常生活に支障をきたすだけでなく、放置すると症状が悪化する可能性があるため、早期の対処が重要です。

膝に水が溜まった場合の対処法

初期症状のチェックとセルフケア

膝に違和感を感じたら、まずは安静にし、冷湿布などでアイシングを行いましょう。サポーターなどで膝を固定することも有効です。痛みが強い場合や、腫れがひどい場合は、早めに医療機関を受診しましょう。安静にする際は、膝を高くして寝ることで、膝への負担を軽減し、腫れを抑える効果が期待できます。アイシングは、15分から20分程度を目安に行い、皮膚への直接的な接触を避けるために、タオルなどで包んでから冷やしましょう。市販のサポーターを使用する際は、サイズが合っているか確認し、締め付けすぎないように注意しましょう。セルフケアは、あくまで初期症状の緩和を目的とするものであり、根本的な治療にはなりません。症状が改善しない場合は、専門医の診察を受けることが大切です。

病院での検査と診断

病院では、問診、触診、レントゲン検査、MRI検査などを行い、膝に水が溜まっている原因を特定します。関節穿刺を行い、関節液を採取して検査することもあります。ヘレネクリニックやイノルト整形外科では、専門的な検査と診断を受けることができます。問診では、いつから症状が出始めたのか、どのような時に痛みが出るのか、過去の怪我や病歴などについて詳しく聞かれます。触診では、膝の腫れ具合や痛みの場所、可動域などを確認します。レントゲン検査では、骨の状態を確認し、変形性膝関節症の進行度合いなどを評価します。MRI検査では、軟骨や半月板、靭帯などの状態を詳しく調べることができ、レントゲンでは確認できない損傷を発見することができます。関節穿刺では、膝に針を刺して関節液を採取し、炎症の程度や感染の有無などを調べます。これらの検査結果を総合的に判断し、膝に水が溜まっている原因を特定します。

具体的な治療方法

治療法は、原因によって異なります。変形性膝関節症の場合は、ヒアルロン酸注射、運動療法、装具療法などが行われます。半月板損傷や靭帯損傷の場合は、手術が必要になることもあります。関節リウマチや痛風の場合は、それぞれの疾患に対する薬物療法が行われます。ヒアルロン酸注射は、関節液の粘度を高め、関節の動きを滑らかにする効果があります。運動療法は、膝周りの筋肉を強化し、関節を安定させることを目的とします。装具療法は、膝にかかる負担を軽減し、痛みを和らげる効果があります。半月板損傷や靭帯損傷の手術は、損傷部位を修復し、膝の機能を回復させることを目的とします。関節リウマチや痛風の薬物療法は、炎症を抑え、関節の破壊を防ぐことを目的とします。これらの治療法は、患者さんの状態や原因に合わせて選択され、組み合わせて行われることもあります。

膝の水を抜くことのメリット・デメリット

水を抜くメリット

膝に溜まった水を抜くことで、一時的に痛みや腫れを軽減することができます。また、関節液を検査することで、原因となっている疾患を特定する手がかりになることもあります。水を抜くことで、膝の圧迫感が軽減され、可動域が改善されることもあります。関節液の検査では、炎症細胞の有無や結晶の有無、細菌の有無などを調べることができ、診断の精度を高めることができます。ただし、水を抜くことはあくまで対症療法であり、根本的な原因を取り除くものではありません。そのため、水を抜いた後も、原因に対する治療を継続する必要があります。水を抜くことによる一時的な症状の緩和は、患者さんのQOL(生活の質)を向上させる上で重要な役割を果たします。

水を抜くデメリットと注意点

膝の水を抜くことは、根本的な治療ではありません。水を抜いても、原因となっている炎症が改善されなければ、再び水が溜まってしまいます。また、感染症のリスクや、神経損傷のリスクも伴います。水を抜いた後は、安静を保ち、医師の指示に従いましょう。感染症のリスクを最小限に抑えるために、清潔な環境下で、適切な消毒を行った上で、関節穿刺を行う必要があります。神経損傷のリスクは非常に低いですが、可能性はゼロではありません。水を抜いた後に、痛みや痺れなどの症状が現れた場合は、すぐに医師に相談しましょう。水を抜いた後は、膝を安静に保ち、無理な運動は避けるようにしましょう。また、医師から指示された薬をきちんと服用し、再発予防に努めましょう。

水を抜いた後のケア

水を抜いた後は、圧迫固定を行い、安静を保ちます。炎症を抑えるために、アイシングを行うことも有効です。医師から指示されたリハビリテーションを行い、膝関節の機能を回復させましょう。圧迫固定は、腫れを抑え、関節を安定させる効果があります。アイシングは、15分から20分程度を目安に行い、皮膚への直接的な接触を避けるために、タオルなどで包んでから冷やしましょう。リハビリテーションは、膝周りの筋肉を強化し、関節の可動域を広げることを目的とします。リハビリテーションの内容は、患者さんの状態に合わせて個別に作成されます。医師や理学療法士の指示に従い、無理のない範囲で継続的に行うことが大切です。また、水を抜いた後は、膝に負担をかけないように、体重管理にも気を配りましょう。

膝に水が溜まらないための予防法

適正体重の維持

肥満は、膝関節への負担を増大させ、変形性膝関節症のリスクを高めます。バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、適正体重を維持しましょう。食事は、高カロリーなものや脂っこいものを避け、野菜や果物、食物繊維を積極的に摂るようにしましょう。適度な運動は、ウォーキングや水泳など、膝への負担が少ないものを選ぶようにしましょう。運動は、毎日30分程度を目安に行うと効果的です。また、体重だけでなく、体脂肪率も意識し、筋肉量を増やすように心がけましょう。筋肉は、関節を支える役割を果たし、膝への負担を軽減する効果があります。適正体重を維持することで、膝関節への負担を減らし、水が溜まるリスクを下げることができます。

適切な運動

ウォーキングや水泳などの、膝への負担が少ない運動を行いましょう。運動前には、ストレッチを行い、準備運動をしっかりと行いましょう。ウォーキングは、膝への負担が少なく、手軽にできる運動です。正しいフォームで歩くことを意識し、無理のない距離から始めましょう。水泳は、浮力により膝への負担が軽減されるため、関節に痛みがある方にもおすすめです。水中ウォーキングやアクアビクスなども効果的です。ストレッチは、膝周りの筋肉を柔軟にし、関節の可動域を広げる効果があります。運動前だけでなく、運動後にも行うことで、疲労回復を促進することができます。準備運動は、筋肉や関節を温め、怪我の予防に繋がります。これらの運動を継続的に行うことで、膝関節の機能を維持し、水が溜まるリスクを下げることができます。

専門家への相談

膝に痛みや違和感を感じたら、早めに専門医に相談しましょう。専門的な知識と経験を持つ医師が、あなたの膝の悩みに寄り添ってくれます。専門医は、問診や検査を通じて、膝の状態を正確に評価し、適切な治療法を提案してくれます。自己判断で放置したり、誤った情報に惑わされたりせずに、専門家の意見を聞くことが大切です。

まとめ

膝に水が溜まる原因は様々ですが、早期に適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。膝の痛みや腫れは、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、放置すると関節の変形や機能障害を引き起こす可能性があります。早期に診断を受け、原因に合わせた治療を行うことで、症状の改善や進行の抑制が期待できます。また、予防法を実践することで、水が溜まるリスクを下げることができます。適正体重の維持、適切な運動、専門家への相談などを心がけ、健康な膝を維持しましょう。膝の健康は、Qualityof Life(生活の質)を向上させる上で非常に重要です。いつまでも自分の足で歩き、活動的な生活を送るために、膝のケアを大切にしましょう。