顎関節症は、多くの人が悩むことがある顎の疾患です。痛みや動かしにくさなどが続くと、日常生活にも影響を与えることがあります。本記事では、顎関節症の症状や診断方法、治療法に加え、どの科を受診するべきか、セルフケア方法などを詳しく解説します。顎関節症の改善に役立つ情報を一緒に確認していきましょう。

記事の監修者情報

吉原 稔

資格:柔道整復師 (整骨院を開業できる国家資格)
柔道整復師専科教員(大学、専門学校の柔道整復師科で講義することができる資格)
NSCA CSCS(全米ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)
経歴
2010~2015年 医療法人堺整形外科医院 福岡スポーツクリニック
2015~2017年 医療法人TSC タケダスポーツクリニック
2018~現在 よし姿勢&スポーツ整骨院・整体院
2014~2017年 福岡医療専門学校 非常勤講師
2015~2023年 九州医療専門学校 非常勤講師
2024~現在   福岡医健・スポーツ専門学校
 非常勤講師

顎関節症とは何か?

基本的な症状と原因

顎関節症は、顎関節やその周辺組織に異常が起こり、口を開けたり閉じたりする際に痛みや違和感、音がしたりするなど、様々な症状を引き起こす疾患です。顎関節は、下顎骨と頭蓋骨をつなぐ関節で、咀嚼や発話など、日常生活において重要な役割を担っています。顎関節症は、この顎関節の働きが阻害されることで発生します。

顎関節症の原因は、ストレス、不正咬合、歯ぎしり、外傷など、様々な要因が考えられます。ストレスによって無意識に歯を食いしばったり、顎を締めたりすることが増えると、顎関節に負担がかかり、顎関節症を発症するリスクが高まります。また、歯並びが悪かったり、噛み合わせがずれていたりすると、顎関節に負担がかかりやすくなり、顎関節症の原因となることもあります。歯ぎしりは、睡眠中に無意識に行われることが多いですが、顎関節に大きな負担をかけるため、顎関節症の原因の一つとして挙げられます。さらに、顎への外傷も、顎関節症の発症に繋がる可能性があります。

顎関節症は、年齢や性別を問わず、誰でも発症する可能性があります。特に、ストレスを抱えやすい人や、歯ぎしりをする人、不正咬合の人は、顎関節症を発症しやすいと言われています。

どんなタイミングで受診すべきか?

顎関節症の症状は、人によって異なりますが、以下のような症状が出現した場合には、早めに歯科医院を受診することをお勧めします。

*口を開けるときに痛みがある
* 口が開けにくい
* 顎がカクカクと音がする
* 顎が脱臼する
* 顔面が腫れる
* 耳の痛みや違和感
* 頭痛
*首や肩の痛み

これらの症状が3日以上続く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、より良い治療効果が期待できます。

顎関節症の診断と検査法

診断方法と科の選び方

顎関節症の診断は、歯科医院で行われます。歯科医師は、まず問診を行い、症状や生活習慣について詳しく聞き取ります。その後、顎関節や周辺組織を触診し、顎の動きや噛み合わせなどを調べます。必要に応じて、レントゲン撮影やCTスキャンなどの画像検査を行うこともあります。

顎関節症の治療は、症状や原因によって異なります。そのため、歯科医師は、患者さんの状態を詳しく把握し、適切な治療法を選択することが重要です。

セルフチェック方法

顎関節症は、初期の段階では症状が軽微な場合が多く、自覚症状がないこともあります。そのため、早期発見が重要です。以下のようなセルフチェックを行い、気になる症状があれば、早めに歯科医院を受診しましょう。

*鏡の前で口を開け閉めし、顎の動きを観察する。
* 口を開ける際に痛みや違和感があるか確認する。
* 顎がカクカクと音がするか確認する。
*顎を触ると痛みがあるか確認する。
*普段の姿勢や噛み合わせを確認する。

これらのセルフチェックで異常を感じた場合は、歯科医院を受診し、専門医に相談することをお勧めします。

治療法:顎関節症は治るの?

主な治療法とその効果

顎関節症の治療法は、症状や原因によって異なりますが、一般的には以下の治療法が用いられます。

*薬物療法:痛みや炎症を抑える薬、筋肉の緊張を和らげる薬などが処方されます。
* 物理療法:温熱療法や超音波療法などを行い、痛みや炎症を緩和します。
*マウスピース療法:歯ぎしりや食いしばりを防ぐために、マウスピースを装着します。
*スプリント療法:顎関節を適切な位置に保つ装置(スプリント)を装着し、顎関節への負担を軽減します。
*咬合治療:歯並びや噛み合わせを改善することで、顎関節への負担を軽減します。
*手術療法:症状が重症で、他の治療法が効果がない場合に行われます。

顎関節症は、適切な治療を行うことで、症状が改善することが期待できます。しかし、原因によっては、完治が難しい場合もあります。そのため、早期に歯科医院を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

スプリント療法について

スプリント療法は、顎関節症の治療法の一つで、顎関節を適切な位置に保つ装置(スプリント)を装着することで、顎関節への負担を軽減し、痛みや炎症を抑制する治療法です。スプリントは、歯科医院で患者さんの歯型に合わせて作製されます。

スプリント療法は、顎関節症の症状が軽度から中等度の場合に有効な治療法です。スプリントを装着することで、顎関節の動きを制限し、顎関節への負担を軽減することができます。また、スプリントは、歯ぎしりや食いしばりを防ぐ効果もあります。

スプリント療法は、一般的に数週間から数ヶ月間、装着する必要があります。スプリントの装着中は、定期的に歯科医院を受診し、状態の確認や調整を行う必要があります。

自宅でできるセルフケアと注意点

顎に優しいマッサージ法

顎関節症の症状を和らげるために、自宅でできるセルフケアも有効です。顎に優しいマッサージは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進することで、痛みや炎症を軽減する効果が期待できます。ただし、自己流のマッサージは、顎関節に負担をかけてしまう可能性もあるため、専門家の指導を受けることをお勧めします。

顎に優しいマッサージ方法としては、以下の方法があります。

1.指の腹で、顎の骨を優しくなぞるようにマッサージする。
2. 顎の筋肉を軽くつまみ、ゆっくりとほぐす。
3.指の腹で、こめかみを優しく円を描くようにマッサージする。

これらのマッサージを、1回5分程度、1日数回行うようにしましょう。マッサージを行う際は、痛みが強い場合は無理せず中止してください。

生活習慣の改善

顎関節症の予防や症状の悪化を防ぐためには、生活習慣の改善も重要です。

*姿勢を正しく保つ:猫背や前かがみの姿勢は、顎関節に負担をかけます。正しい姿勢を意識し、顎関節への負担を軽減しましょう。
*ストレスを軽減する:ストレスは、歯ぎしりや食いしばりを引き起こし、顎関節に負担をかけます。ストレスをためないように、ストレス解消方法を見つけて、積極的に実践しましょう。
*睡眠の質を高める:睡眠不足は、顎関節の筋肉の緊張を高め、顎関節症の症状を悪化させる可能性があります。質の高い睡眠を心がけましょう。
*食生活の改善:硬いものや粘り気のあるものを食べる際は、よく噛んで食べるようにしましょう。また、偏った食生活は、顎関節の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。バランスの取れた食事を心がけましょう。
*口呼吸を改善する:口呼吸は、顎関節に負担をかけます。鼻呼吸を意識するようにしましょう。
*定期的な歯科検診:定期的な歯科検診を受けることで、歯並びや噛み合わせの異常を早期に発見することができます。

マウスピースの効果的な使い方

マウスピースは、歯ぎしりや食いしばりを防ぐために使用されます。市販のマウスピースもありますが、顎関節症の治療目的でマウスピースを使用する場合は、歯科医院で作成されたものを使用することをお勧めします。

歯科医院で作成されたマウスピースは、患者さんの歯型に合わせて作製されるため、フィット感が良く、効果的に歯ぎしりや食いしばりを防ぐことができます。また、歯科医師は、患者さんの状態に合わせて、適切なマウスピースを選択し、使用方法を指導してくれます。

マウスピースを使用する際は、以下の点に注意しましょう。

*寝る前に必ず装着する。
* 毎日、歯ブラシで丁寧に洗浄する。
*定期的に歯科医院を受診し、状態の確認や調整を行う。

マウスピースは、顎関節症の治療に有効な手段の一つですが、すべての患者さんに効果があるわけではありません。また、マウスピースを装着しても、症状が改善しない場合もあります。症状が改善しない場合は、歯科医師に相談しましょう。

まとめ:顎関節症の向き合い方

顎関節症は、放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたす可能性があります。早期に歯科医院を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

顎関節症の治療は、患者さんの状態や原因によって異なります。そのため、歯科医師の指示に従い、治療を継続することが大切です。また、自宅でできるセルフケアも積極的に行い、顎関節の健康を維持しましょう。

顎関節症は、完治が難しい場合もありますが、適切な治療とセルフケアを行うことで、症状を改善し、快適な生活を送ることができるようになります。顎関節に違和感を感じたら、早めに歯科医院を受診し、専門医に相談しましょう。