膝の痛みで悩んでいる方にとって、整形外科で行うヒアルロン酸注射は一般的な治療法の一つです。
しかし、中には「ヒアルロン酸注射が効かない」と感じる方もいるかもしれません。
この記事では、ヒアルロン酸注射の効果や、効果がないと感じる原因、そしてその改善策について、整形外科に8年間勤務した医療系国家資格もちの私が詳しく解説します。適切な治療法を選択し、膝の痛みを和らげるためにお役立てください。
記事の監修者情報
ヒアルロン酸注射とは?そのメカニズムと効果
ヒアルロン酸は膝関節にどのような役割があるの?
ヒアルロン酸注射が膝にどのような役割をするのかを理解してもらうためにまず膝のことを説明させてください。
ヒアルロン酸は、もともと体内に存在する成分で、関節の滑らかな動きをサポートする役割を持っています。
普段の生活の中で化粧水にヒアルロン酸入り!などよく見ると思いますが、粘着のある?組織とイメージしてください。
関節の軟骨の中や関節液の中に含まれており、軟骨のもともとの成分、軟骨の保護や関節の潤滑油としての機能を果たします。
軟骨の修復と変形性関節症のこと
人の臓器や組織は負担がかかり毎日傷ついたり、何かしらの炎症を起こしています。その修復には材料となる栄養が必要です。その栄養はどのように運ばれるかというと血管が運んできます。このことは皆さんも想像できますよね。
しかし軟骨にはもともと血管や神経が通っていません。血管が通っていないので軟骨に栄養が行かないです。
でも軟骨も日々、負荷を受け傷ついては、修復され、また傷ついては、修復されを繰り返しています。血管は通っていないのにどうやって修復しているのでしょうか?
軟骨は関節液の中のヒアルロン酸などの成分を、関節が動く圧力によって軟骨に栄養を取り込んでいます。その栄養を使って修復してます。
そのため軟骨修復には、関節液と関節運動が必要になるんですね。
修復のスピードよりも破壊のスピードが速くなると、軟骨がすり減り、変形性関節症になっていくわけです。
一度軟骨が大きく壊れると、軟骨はなかなか修復しません。そして軟骨がすり減ると、軟骨の下には骨があります。骨には血管が豊富にあるため骨に刺激が加わると痛みが出てしまします。これが変形性関節症の痛みの要因の一つになります。
ヒアルロン酸注射の基本的な仕組み
変形性膝関節症などにより、関節軟骨内のヒアルロン酸が減少すると、関節の動きが悪くなり痛みが生じます。
ヒアルロン酸注射は、このヒアルロン酸を人工的に補うことで、関節の機能を改善し、痛みを緩和することを目的としています。
ヒアルロン酸注射は、週1回の投与を5週続け、その後は効果に応じて2〜4週に1回というペースで行われるのが一般的です。
変形性関節症初期から中期に効果的といわれており、効果を感じるのなら注射を継続的に受けるといいと思います。
しかし週1回を5回受けても効果を感じなければ、その後10回まで受けても効果を感じる人は少ないと思います。

ヒアルロン酸注射のメリット・デメリット
ヒアルロン酸注射のメリットは、比較的安全性が高く、副作用が少ない点が挙げられます。
手術に比べて身体への負担が少なく、外来で短時間で治療が可能です。
また、痛みの緩和効果が期待できるため、日常生活の質を向上させる可能性があります。
デメリットとしては、効果の持続期間が限られているため、定期的な注射が必要となる場合がある点です。
また、全ての人に効果があるわけではなく、症状によっては効果を感じにくい場合もあります。
ヒアルロン酸注射の効果が現れやすい症状とは
ヒアルロン酸注射は、初期から中期の変形性膝関節症による痛みに効果を発揮しやすいとされています。
関節内のヒアルロン酸が減少し、軟骨の損傷が軽度な場合に、関節の動きをスムーズにし、痛みを緩和する効果が期待できます。
また、関節の炎症を抑える効果も期待できるため、炎症性の痛みを伴う場合にも有効な場合があります。
ただし、重度の変形や軟骨の著しい損傷がある場合には、効果が限定的になることがあります。
ヒアルロン酸注射が効かないと感じる原因
注射部位の間違いによる効果不足
ヒアルロン酸注射は、正確な位置に注射することが非常に重要です。
関節腔内に適切に注射されないと、ヒアルロン酸が十分に効果を発揮できません。
注射部位がずれていたり、関節外に注入されたりすると、痛み止めとしての効果が得られないばかりか、炎症を引き起こす可能性もあります。
熟練した医師による正確な注射技術が、治療効果を左右する重要な要素です。
進行した変形性膝関節症による効果の限界
変形性膝関節症が進行し、軟骨が著しく損傷している場合や、骨の変形が著しい場合には、ヒアルロン酸注射だけでは十分な効果が得られないことがあります。
この状態では、関節の構造自体が大きく変化しており、ヒアルロン酸の補給だけでは痛みの根本的な解決には至りません。
重度の変形性膝関節症には、ヒアルロン酸注射以外にも、手術療法や他の治療法を検討する必要があります。
その他の痛みの原因
膝の痛みには、変形性膝関節症以外にも様々な原因が考えられます。
例えば、筋肉や腱の炎症、神経の圧迫、半月板損傷、靭帯損傷などが原因で痛みが起こる場合もあります。
これらの原因による痛みの場合、ヒアルロン酸注射では効果が期待できません。
痛みの原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。
ヒアルロン酸注射以外の改善方法
整体やリハビリ
軟骨に負荷がかかるので、軟骨が傷がついたり、変形性関節症を発症します。その負荷がかかりやすい姿勢や体の問題があるといううことです。
例えば、膝関節の負荷がかかる原因に膝の可動域制限があります。特に膝がちゃんと伸びていない人は多いです。膝が曲がらなくなると気づく人は多いですが、膝が伸びていないことを自覚できている人は膝痛の初期の段階では少ないです。
また猫背や足首の硬さや体幹、臀部の弱さが原因で骨盤が後ろに倒れたり、後方に重心が偏っている人も多いです。
一概には言えませんが、身体のバランスが崩れてきて、膝に負荷がかかってるがゆえに、変形性関節症になっているということは考えられます。
整骨院、接骨院、整体院、リハビリの先生は体の問題点を把握してくれる機会をくれると思います。お近くの先生に相談してみてください。

筋トレと可動域の改善
変形性膝関節症の問題点として、膝の可動域制限と体の使い方と筋力の低下、特に大腿四頭筋や内転筋、臀部の筋力低下があります。
筋トレで注意しないといけないのは可動域が狭いうちに筋トレです。可動域が狭すぎると筋トレの最大限の効果が得られないかもしれません。というのも筋トレは可動域をめいいっぱい使ったほうがいいからです。意識次第ですが、筋トレをすると可動域が広がります。
可動域改善を意識しない筋トレは、狭い可動域内での筋トレになってしまい、硬い膝が出来上がります。硬い膝はせっかく筋トレをしても、痛みは変わらないかもしれません。
そのため、可動域が狭くなっている人が筋トレをして痛みを取りたいと考えている人は、今後の予防として筋トレをしようと考えている人は筋トレしながらも可動域を増やすという意識でやってみてください。
その他の選択肢と注意点
変形性膝関節症の治療には、ヒアルロン酸注射や整体、運動療法の他にも、PRP注射や手術療法などの選択肢があります。
手術療法は、変形が著しい場合や他の治療法で効果が得られない場合に検討されます。関節鏡、高位脛骨骨切り術やTKAといわれる人工関節置換術
など患者の状態に合わせて、最適な治療法を選ぶことが重要です。
最適な治療法を選ぶために
医師との相談の重要性
膝の痛みや症状の原因を正確に特定し、最適な治療法を選ぶためには、専門医との相談が不可欠です。
医師は、患者の症状や状態を詳しく診察し、X線やMRIなどの画像検査の結果を総合的に判断して、適切な治療法を提案します。
自己判断で治療を始めたり、中断したりせず、必ず医師の指示に従うことが大切です。
専門医療機関では、様々な治療法を提供しており、患者に最適な治療プランを提案してくれます。
日常生活での注意点
膝の痛みを和らげるためには、日常生活での注意も重要です。
適度な運動やストレッチで膝周りの筋肉を強化することは、関節の安定性を高め、痛みを軽減する効果があります。
また、体重をコントロールし、膝への負担を減らすことも大切です。
日常生活での姿勢や動作にも注意し、膝に負担のかからないように心がけましょう。
痛みが強い時には、無理をせず安静にすることも重要です。
信頼できる医療機関の選び方
膝の治療を行う際には、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。
専門的な知識や経験を持つ医師が在籍しているか、最新の医療技術や設備が整っているかを確認しましょう。
また、患者の話をよく聞き、丁寧な説明をしてくれる医師を選ぶことも大切です。
再生医療に特化した医療機関は、専門的な治療を受けることができるためおすすめです。
治療実績や患者からの評判なども参考に、信頼できる医療機関を選びましょう。
まとめ
ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症による痛みを緩和する効果が期待できる治療法ですが、全ての人に効果があるわけではありません。
注射部位の間違いや、進行した変形性膝関節症の場合には、効果が限定的になることがあります。
痛みの原因を正確に特定し、適切な治療法を選ぶためには、専門医との相談が重要です。
ヒアルロン酸注射以外にも、様々な治療法があります。
患者の状態に合わせて最適な治療法を選択し、痛みを軽減し、快適な日常生活を送れるようにしましょう。
専門性の高い医療機関で治療を受けることをおすすめします。